日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

2019年8月22日話す目的を考える


私はドラマが好きでよく見ています。

2年ほど前に「コードブルー」というドラマが放映されていました。
このドラマでは、後になっても忘れられないセリフ、場面が幾つかありました。
今回はその中の一つをご紹介します。



ドラマの舞台となっている病院に、長い間、入院していた17歳の男の子がいました。
その子と、病院のスタッフやドクター達は、とても仲よしで、彼らはこの男の子をとてもかわいがっていました。
しかし、病状が悪化し、残念ながらその子は亡くなってしまいます。

その子は長く生きることができないことがわかっていたので、亡くなった後は臓器提供することに承諾していました。

仲良くしていた男の子が若くして死んでしまった直後、悲しみに暮れるスタッフ達。

でも、その中で、その子と一番仲がよかった女性ドクターは、涙一つ流さず、淡々と臓器提供の書類に記入しています。

その女性ドクターに、泣きながらスタッフが
「XX先生! この子が死んで悲しくないんですか! よく書類仕事なんてしていられますねっ!」

すると、その女性ドクターは、静かな語り口で、
「この17歳の子の身体は日本中に運ばれていく。
この6行はこの子が17年間、生きた証し。
そして、この一行一行に、これから生きる6人の未来が書かれている。
だから私は手を抜かずにやりたいの。書類仕事を。」

私はこのセリフを聞いて、とても感動しました。

この女性ドクターは、書類を書くことが目的ではなくて、その書類を書いて、6人の子供達を救うことを目的と考えていました。

「この仕事は何のためにやるのか?」ということ、私たちはきちんと考えなかったり、忘れていたりしがちです。

書類仕事は、多くの人が携わっていることです。
しかし、その書類は何のために作成(修正)するのか、ということを考え、意識すれば、仕事の質はガラッと変わってくるんだなぁ、と思いました。

ところで、これは、話し方にも言えることだと思います。

私たちを話をするときには、大なり小なり、目的があるはずです。
しかし、その目的を意識しないまま、見失ったまま、話をしてしまうことがよくあります。

私は、この原因には、感情の作用があると思っています。
私たちは、日常会話や会議での発言、人前でのスピーチなど、話をするとき、少なからず感情が伴います。
感情が先に立ってくると、何のために話しているのか、ついつい忘れてしまい勝ちになります。

例えば、日常会話は、人間関係をよくすることに目的があると思います。
従って、相手に気持ちよく話をしてもらい、相手に気持ちよく話を聞いてもらうことが大切です。

しかし、感情が動き出すと、そうした意識が薄れ、自分の感情に支配された話をしてしまうようになります。
その結果、相手が気持ちよいかどうかは、二の次三の次になってしまいます。

また、会議では、その会議の議題や論点について、出席者が合意できる結論につながる発言をすることが、参加者の目的になるでしょう。

しかし、ここでも、自分の考えとは違う意見などが出ると、途端に感情が動いてしまい、その意見をつぶすことが目的の発言をしたりします。
また、論点ではない所に意識が向くと、結論にはつながらない、興味本位の話をしてしまったりします。

感情をコントロールするのはなかなか難しいですが、常に意識することで少しずつ改善されると思っています。

私は今、何のために話をするのか。

できるだけ意識をしていきたいものです。
>横田章剛のブログTOP